地域発 豊かな心行き はじめに 学校を退職し2年目に入った。ガラッと変わる生活はだれしも40年の整理から始まるといわれているが,私も例に漏れずにその作業に着手した。最後の年に,全国中学校の道徳教育研究大会をさせてもらったこともあり,道徳に関するものだけは手元で温めている。あの大会で,道徳教育は学校だけの力では効果が上がりにくいと考え,PTAの発表を取り入れたことが未だに印象強い。多くの方の協力で出来上がったあの大会の感動は,今も残っている。そして今,学校や子どもを地域の窓から見つめている。そこからの景色は当然,今までとは相当の違いがある。その窓からの景色の描写をしてみよう。 スケッチ1 夏休みに広島の8拠点で,子どもたちのエコクラブによる川の生物の調査が行われた。そこにスタッフとして参加した。子どもたちと保護者,スタッフが川に入り,スコップで川底を掘って,生存する生物の調査をした。その整理を川岸でしていたときのことである。犬の散歩道でもあるそこには,生々しい糞があった。知らずに踏んだ子がいた。そのことから,せっかく楽しく調査をしたのに,除け者にされてしまった。その後も,糞を始末せず次にだれが踏むかを見ている親子。回りにはスコップなどもいくらもあるのに,だれも始末をしない。さりげなく土をかけて,そのハプニングにピリオドを打った。環境を考えるクラブなのに,何か変だ。予期せぬ立場におかれたときのとっさの行動や,いじけている子への声掛け,いじめをする子どもへの叱咤ができる環境が要る。 スケッチ2 親に代わり,挨拶運動ボランティアに参加した。若いお母さんに混じって正門に立つ。2,3人ずつ雑談をしながら時を待っている。知り合いのいない私は,その近くに1人黙って立っている。その姿に私自身違和感を感じ,居心地が悪かった。彼女たちにも,私の存在が異様に映っていただろう。その空気を打ち消すように児童たちが登校をしてきた。児童たちが大人の前を通っていく。「おはよう」と言えば,下を向いて「おはようございます」という声が返ってくる。彼女たちは,まだ口々に話をしている。しばらくして,「おはようございます」という大人の声がかすかに聞こえ出した。しかし,児童の返事は返ってこない。返事が返ってこないので,また雑談になっていく。挨拶運動は職業がら,私にとっては慣れたものである。知らない児童たちに「おはよう,それで今日はなにか作るの?」「うん,図工で水族館を作るんだ!」「いいなあ」「おはよう!楽しそうだね」と,一人ひとりに私はにこっと声を掛けるようにした。児童たちは,しっかりと返事をしてくれる。その姿を見ていた彼女たちは驚いていたが,だんだんと見習い始めた。児童たちの返事も聞こえだした。彼女たちの顔が生き生きとしはじめた。が,時間がきてしまった。残念そうに彼女たちも解散した。挨拶のボランティアとして呼びかけられて来たのに,そのテクニックがわからず,ぐずぐずしていたが,要領がわかるととても楽しそうだった。やる気を出してボランティアに臨んだ者が満足して終えられ得ることは,次に続けるためにも必要だ。 後日,この様子を校長先生に話した。次の学校通信に「挨拶運動では,おはようの後に一言つけ加えるといいですよ」と書かれていた。このようにすぐに反映してもらえたことに感動した。こういう学校の姿勢には,地域もより協力しようという気持ちになるものだ。 スケッチ3 今年の4月から大学校に通っている。ここでは,地域のリーダーとしての学習や,高齢者の介護などについての講座などが組み込まれている。夏休みの宿題もある。その一つに,介護ボランティアの実習をすることが挙げられていた。施設を探し,接客や話し相手の活動をした。積極的な私は,次々に話しかけたり,マイクをもって歌ったりもした。とはいえ,事前の注意事項もあり,配慮をしながらの行動だった。迷惑もかけずに,私自身満足の中で一日を終えることができた。 その後,学校で,高齢者の閉じこもりについての講座があった。意欲がなくなり不安が募る。不安から時に思い切って行動し,それが常識に合わないことになる。そこで,また自信を失い,ますます閉じこもりになるという。社会や家族のコミュニケーションができていると,防げる部分が多いということを習った。このような現状をしっかりと知っておくことは,体験学習をするにしろ,日常の生活をするにしろ,大切なことである。人との接し方を学校で,もっとあらゆる機会で,地域を活用し学習させることが必要だ。学校だけが人づくりを背負わなくてもいいと思う。また,夏休みなどにまず教員が体験学習をして,実態をしっかりと地域から学ぶことも必要と思える。 おわりに 最近の子どもは……と,憂う言葉をよく聞く。 今,社会の課題を宮沢賢治の雨ニモマケズと,合わせてみた。雨ニモマケズ,風ニモマケズ,雪ニモ夏ノ暑サニモマケヌ……丈夫な身体を持っているか? 今,人は,どんなところに住み,どんな食事をしているか? 見返りを求めず,東西南北,人のために走り回れることがひたすら行えるだろうか? ボランティアそのものを彼は願っている。この詩は,まさに今,求められている人間像である。 社会の求める人間像を,道徳教育の時間に地域の声や作家のつぶやきを元に組み立てていってはどうだろう。 学校と地域のかかわりの観点からの道徳教育の見直しを,どこかで提言したいと思っている。 |
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暮らしノの中の自然見つめて 平成18年7月27日 中国新聞朝刊 観察冊子作り配布 広島市や周辺に残る自然の調査をしている市民グループ「ひろしま生きた自然博物館」(十六人)が、小中学生対象の自然観察のワークシートを作った。身近な白然に興味を持ってもらうのが狙い。 A4判、70ページ メンバーの元理科教員らが、昨年四月から安芸区、南区などでの現地調査を重ねて執筆した。岩滝山(安芸区船越町)に自生する二種類のモミジの葉のぎざぎざの違いをスケッチさせるページや、似島(南区)にすむヘイケボタルの生態に関するクイズなどもある。指導用の解説32ページも掲載した。 完成した千部は市内の小中学校や公民館などに配る。中心となった世木田寛子さん(62)=熊野町=は「夏休みの研究にも使える。理科好きになるきっかけにしてほしい」と期待している。希望者には無料で配布する。 吉島公民館082(246)4121。 (江川裕介) |
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豊かな自然が残る両区元宇品町を学習の場に活用しようと結成した「ひろしま生きた自然博物館」が、小中学生向けの自然廟察の手引となるワークシートを作成した。二千部印刷し、市内の小中学校や公民館などに配る。 A4判の片面刷りで六十五ページ。メンバーの元教員ら十人が、五月から現地に通って作り上げた。 原生林と海岸の動植物、地質など四つの観察コースを設定。スケッチしたりクイズに答えたりする設問を多く取り入れ、小中学生が自然に興味を持つよう工夫した。指導用の解説も付けた。 メンバーの元中学校長の世木田寛子さん61)=熊野町=は「子どもの好奇心を ′かき立てるように頑張った。自然に目をむけるきっかけになってほしい」と話している。
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元宇品の自然学ぼう 市民団体が手引作成 |
'04/5/29 |
メンバー五人が参加し、約五時間かけて山を散策。イヌビワ、ナナミノキなどの植物の種類をメモしていった。
シートは観察コースをたどりながら、草花の絵を描いたり、クイズに回答するなどの内容を想定。小学生から中学生まで学年に合わせた形式を工夫する。
シートづくりのチーフを務める元中学校長の世木田寛子さん(61)=広島県熊野町=は「今後も観察を続け、気軽に取り組めて楽しく自然を学べるシートに仕上げたい」と意気込んでいた。
【写真説明】元宇品の植物を観察する「生きた博物館」のメンバー
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